明け方に山月記を読み返す🌕⛰🐅

1 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:01:40.29 ID:1CiX8SU2d.net
🐯・・・

57 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:22:35.06 ID:cRhCq9Mq0.net

マジかよタイガース最低だな

23 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:10:48.20 ID:1CiX8SU2d.net

 時に、殘月、光冷やかに、白露は地に滋く、樹間を渡る冷風は既に曉の近きを告げてゐた。人々は最早、事の奇異を忘れ、肅然として、この詩人の薄倖を嘆じた。李徴の聲は再び續ける。

 何故こんな運命になつたか判らぬと、先刻は言つたが、しかし、考へやうに依れば、思ひ當ることが全然ないでもない。

人間であつた時、己れは努めて人との交を避けた。人々は己れを倨傲だ、尊大だといつた。實は、それが殆ど羞恥心に近いものであることを、人々は知らなかつた。

勿論、曾ての郷黨の秀才だつた自分に、自尊心が無かつたとは云はない。しかし、それは臆病な自尊心とでもいふべきものであつた。

96 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:53:53.04 ID:1CiX8SU2d.net

>>92
「人であるうちに」ってのは思考が人であるうちにってことよな
ワイはその状態から自死を選べるんやろかって思ったんや
ウサギ見ただけで消える人間の思考やし虎の本能で自死を拒むかもしれんなって

80 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:38:36.69 ID:1CiX8SU2d.net

虎になった李徴はすぐに死を想うたわけやがウサギが通りがかって人間としての意識は消えてもうた
人間としての意識がある時に自死はできるんやろか?

9 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:05:21.34 ID:FnlEZKwE0.net

このスレまだやってるのか

91 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:49:10.88 ID:guZ6yg7C0.net

ワイも虎になりかねんわ

54 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:21:55.85 ID:OwYQFtCtd.net

ヒキニートワイ、山月記を読み改心する😭

55 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:22:04.25 ID:1CiX8SU2d.net

>>49

章魚木の下で  中島敦

37 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:14:59.22 ID:clxxrwhS0.net

久々に見た

25 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:11:37.40 ID:S2si6Of70.net

完走してるの見たことない定期

3 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:02:55.01 ID:1CiX8SU2d.net

 隴西の李徴は博學才穎[えい]、天寶の末年、若くして名を虎榜[こぼう]に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃む所頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかつた。

いくばくもなく官を退いた後は、故山、虢略に歸臥し、人と交を絶つて、ひたすら詩作に耽つた。下吏となつて長く膝を俗惡な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺さうとしたのである。

しかし、文名は容易に揚らず、生活は日を逐うて苦しくなる。李徴は漸く焦躁に驅られて來た。

28 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:12:18.51 ID:K9QEnPO+d.net

いや読んでないやんコピペしてるだけやん

48 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:18:27.36 ID:f6+Jdq3Q0.net

久々に見た

42 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:16:27.44 ID:jf4Z0Khn0.net

サンガツ

60 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:24:28.44 ID:1CiX8SU2d.net

併し、とにもかくにも其等の文章を通じて、文学をする者にとっての現在の問題というものが朧げながら判っては来た。

思えば自分は今迄章魚木[たこのき]の下で、時局と文学とに就いて全く何とノンビリした考え方しかしていなかったことかと我ながら驚いた。

ノンビリした考えどころではない、てんで何も考えなかったのだ。戦争は戦争、文学は文学。全然別のものと思い込んでいたのだ。

己に課せられた実務が目下の所第一の急務で、他は顧みる暇がない。稀に暇があった時にのみ些かは文字を連ねることもあったが、必ずしも文学作品という意識を以てではない。書くものの中に時局的色彩を盛ろうと考えたこともなく、まして、文学などというものが国家的目的に役立たせられ得るものとは考えもしなかった。

少くとも応用科学が戦争に役立つと同じ意味で文学が戦争に役立ち得るとは愚かにも思い及ばなかったので、此の際文学は忘れ去って唯当面の仕事を一心にやっていればいいのだと簡単に考えた。

39 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:15:52.29 ID:1CiX8SU2d.net

>>28
見とる人は知らんがワイは読んどる
李徴がもし先に家族のことから切り出してたらどうなるかとかや

93 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:51:30.44 ID:1CiX8SU2d.net

>>91
自分の中の猛獣を飼い慣らしとけば大丈夫や
自分の積み重ねてること結果自分が発狂しそうなパターンを想像して回避せな

12 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:06:44.98 ID:1CiX8SU2d.net

少し明るくなつてから、谷川に臨んで姿を映して見ると、既に虎となつてゐた。

自分は初め眼を信じなかつた。次に、之は夢に違ひないと考へた。夢の中で、之は夢だぞと知つてゐるやうな夢を、自分はそれ迄に見たことがあつたから。

どうしても夢でないと悟らねばならなかつた時、自分は茫然とした。さうして、懼れた。全く、どんな事でも起り得るのだと思うて、深く懼れた。

しかし、何故こんな事になつたのだらう。分らぬ。全く何事も我々には判らぬ。理由も分らずに押付けられたものを大人しく受取つて、理由も分らずに生きて行くのが、我々生きもののさだめだ。

自分は直ぐに死を想うた。しかし、其の時、眼の前を一匹の兎が駈け過ぎるのを見た途端に、自分の中の人間は忽ち姿を消した。

再び自分の中の人間が目を覺ました時、自分の口は兎の血に塗れ、あたりには兎の毛が散らばつてゐた。之が虎としての最初の經驗であつた。

64 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:27:15.61 ID:5CXIaVFY0.net

なんでトラになるんかわからん
もっとみみっちいもんになるやろ

82 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:40:37.75 ID:1CiX8SU2d.net

>>78
山月記の素材元を辿っていくと最初は唐の時代の書物になるんやがそれの李徴は尊大で仕事辞めて再就職先探しとるうちに虎になるんや
中国での伝統的な虎のイメージが尊大で孤高で凶暴なものなんやないのか?

26 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:11:42.52 ID:1CiX8SU2d.net

人間は誰でも猛獸使であり、その猛獸に當るのが、各人の性情だといふ。

己れの場合、この尊大な羞恥心が猛獸だつた。虎だつたのだ。
之が己を損ひ、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形を斯くの如く、内心にふさはしいものに變へて了つたのだ。

46 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:17:45.56 ID:1CiX8SU2d.net

>>30
ワイも弟子は好きやし読むけど貼るには1時間あっても足りないんや

>>32
その気持ちはわかるで日が昇るのが早すぎるし暑い

79 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:38:27.80 ID:9/xJr5Rl0.net

ワイはすき
イッチから山月記愛を感じる

15 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:07:47.70 ID:KAE6J3Eq0.net

これが有名な山月記ガイジか僥倖僥倖

52 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:20:37.09 ID:FBpPskcc0.net

久々に見た

68 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:28:47.44 ID:1CiX8SU2d.net

文学者の戦場は飽く迄書斎にあると唱える人が多い。現在も尚旺盛な創作熱にとり憑かれている人や、大いに自己の文学を以て御奉公し得る自信のある作家なら、充分にそれを主張する資格がある。

併し、全然書けなくなったり、自己の作品に不安を感じたりするような人迄が、今迄文学をやって来たからというそれだけの事実に引きずられて、無理に書斎に噛りついていることは無い。人手の足りない此の際、宜しく筆を捨てて何等かの実際的な仕事に就いた方が、文学の為にも国家の為にもなろうと思うのである。

43 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:16:37.60 ID:1CiX8SU2d.net

(昭和17年2月發表)

78 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:38:10.70 ID:5CXIaVFY0.net

>>75
いや、なんでこの話書いた奴が変身するものにトラを選んだのか疑問なんや

36 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:14:47.61 ID:cJPcNsAS0.net

🙎‍♂「その声は、我が友、李徴子ではないか?」

🐯「如何にも自分は隴西の李徴である」

ここだけでいいよね

38 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:15:07.31 ID:1CiX8SU2d.net

 言終つて、叢中から慟哭の聲が聞えた。袁傪も亦涙を泛べ、欣んで李徴の意に副ひ度い旨を答へた。李徴の聲は併し忽ち又先刻の自嘲的な調子に戻つて、言つた。

 本當は、先づ、この事の方を先にお願ひすべきだつたのだ、己れが人間だつたなら。飢ゑ凍えようとする妻子のことよりも、己の乏しい詩業の方を氣にかけてゐる樣な男だから、こんな獸に身を墮すのだ。

 さうして、附加へて言ふことに、袁傪が嶺南からの歸途には決して此の途を通らないで欲しい、其の時には自分が醉つてゐて故人を認めずに襲ひかかるかも知れないから。

又、今別れてから、前方百歩の所にある、あの丘に上つたら、此方を振りかへつて見て貰ひ度い。自分は今の姿をもう一度お目に掛けよう。勇に誇らうとしてではない。我が醜惡な姿を示して、以て、再び此處を過ぎて自分に會はうとの氣持を君に起させない爲であると。

56 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:22:13.80 ID:TaNSzOVp0.net

久々やな

65 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:27:30.07 ID:1CiX8SU2d.net

自己の作物の時局性の薄いことを憂えて取って付けた様な国策的色彩を施すのも少々可笑しい。

感動はあっても未だ文学的なものに迄醗酵しないし、古い題材では矢張何かしっくりせず、其の他種々の事情から現在が書きにくい時期だということは判る。だから、書けなければ書けないで、何も無理をして書かなくともいいのではないか。

(ここで私は再び南洋での元の考え方に戻って来る。)

作家という名前は返上して、戦時下の国民の一人として戦争遂行に必要な実務にたずさわればいいのではないか。

86 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:43:57.85 ID:5ty/qdHSa.net

久々に夜更しして久々に見たわ

11 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:06:09.30 ID:1CiX8SU2d.net

 今から一年程前、自分が旅に出て汝水のほとりに泊つた夜のこと、一睡してから、ふと眼を覺ますと、戸外で誰かが我が名を呼んでゐる。聲に應じて外へ出て見ると、聲は闇の中から頻りに自分を招く。覺えず、自分は聲を追うて走り出した。

無我夢中で駈けて行く中に、何時しか途は山林に入り、しかも、知らぬ間に自分は左右の手で地を攫んで走つてゐた。何か身體中に力が充ち滿ちたやうな感じで、輕々と岩石を跳び越えて行つた。

氣が付くと、手先や肱のあたりに毛を生じてゐるらしい。

87 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:44:14.55 ID:1CiX8SU2d.net

>>83
君の言うところの精神病を発症ってのが「遂に発狂した」ってところよな?その時点ではまだ虎になっとらんよな
つまりそっから自殺するか狂人か虎になるかしか李徴に道はなかったってことで合っとるか君が言いたいのは

4 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:03:24.90 ID:1CiX8SU2d.net

この頃から其の容貌も峭刻となり、肉落ち骨秀で、眼光のみ徒らに烱々として、曾て進士に登第した頃の豐頬の美少年の俤は、何處に求めやうもない。

數年の後、貧窮に堪へず、妻子の衣食のために遂に節を屈して、再び東へ赴き、一地方官吏の職を奉ずることになつた。

一方、之は、己の詩業に半ば絶望したためでもある。曾ての同輩は既に遙か高位に進み、彼が昔、鈍物として齒牙にもかけなかつた其の連中の下命を拜さねばならぬことが、往年の儁[しゆん]才李徴の自尊心を如何に傷つけたかは、想像に難くない。

彼は怏々として樂しまず、狂悖[はい]の性は愈々抑へ難くなつた。

10 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:05:32.06 ID:1CiX8SU2d.net

 後で考へれば不思議だつたが、其の時、袁傪は、この超自然の怪異を、實に素直に受容れて、少しも怪まうとしなかつた。彼は部下に命じて行列の進行を停め、自分は叢の傍に立つて、見えざる聲と對談した。

都の噂、舊友の消息、袁傪が現在の地位、それに對する李徴の祝辭。

青年時代に親しかつた者同志の、あの隔てのない語調で、それ等が語られた後、袁傪は、李徴がどうして今の身となるに至つたかを訊ねた。草中の聲は次のやうに語つた。

20 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:09:38.83 ID:1CiX8SU2d.net

 袁傪は部下に命じ、筆を執つて叢中の聲に隨つて書きとらせた。李徴の聲は叢の中から朗々と響いた。

長短凡そ三十篇、格調高雅、意趣卓逸、一讀して作者の才の非凡を思はせるものばかりである。

しかし、袁傪は感嘆しながらも漠然と次の樣に感じてゐた。成程、作者の素質が第一流に屬するものであることは疑ひない。しかし、この儘では、第一流の作品となるのには、何處か(非常に微妙な點に於て)缺ける所があるのではないか、と。

19 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:09:18.88 ID:1CiX8SU2d.net

>>15
山月記ガイジとかより山月記の文章を見返す方が楽しいで

75 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:34:03.42 ID:1CiX8SU2d.net

>>64
虎になっているというのが李徴にとって現実や虎になりたいと思ったわけでもないんや

33 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:13:19.63 ID:1CiX8SU2d.net

>>25
またこれそんなに立っとるんか

61 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:25:35.63 ID:1CiX8SU2d.net

国民の一人として忠実に活きて行く中に、もし自分が文学者なら其の中に何か作品が自然に出来るだろう。

しかし出来なくても一向差支えない。

一人の人間が作家になろうとなるまいと、そんな事は此の際大した問題ではない。

其の程度のボンヤリした考えで東京へ出て来たものだから、種々な微妙複雑な問題の氾濫にすっかり吃驚[びつくり]したのである。成程、文学も戦争に役立ち得るのかと其の時始めて気が付いたのだから、随分迂闊な話だ。

17 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:08:19.00 ID:1CiX8SU2d.net

所で、さうだ。己れがすつかり人間でなくなつて了ふ前に、一つ頼んで置き度いことがある。

71 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:30:06.47 ID:1CiX8SU2d.net

 章魚木島で暮していた時戦争と文学とを可笑しい程截然と区別していたのは、「自分が何か実際の役に立ちたい願い」と、「文学をポスター的実用に供したくない気持」とが頑固に素朴に対立していたからである。

章魚木の島から華の都へと出て来ても、此の傾向は容易に改まりそうもない。まだ南洋呆けがさめないのかも知れぬ。

62 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:25:44.87 ID:v0i17sPBr.net

>>50
聡明やったが精神病を発症した人や
鬱々としてる無職の人を李徴にしたんやないか
狂人になってまうか自死するかしかないんやろか

59 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:23:44.62 ID:z/3r48Nlr.net

短くて読みやすい

18 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:08:44.38 ID:1CiX8SU2d.net

 袁傪はじめ一行は、息をのんで、叢中の聲の語る不思議に聞入つてゐた。聲は續けて言ふ。

 他でもない。自分は元來詩人として名を成す積りでゐた。しかも、業未だ成らざるに、この運命に立至つた。曾て作る所の詩數百篇、固より、まだ世に行はれてをらぬ。遺稿の所在も最早判らなくなつてゐよう。

所で、その中、今も尚記誦せるものが數十ある。之を我が爲に傳録して戴き度いのだ。

何も、之に仍つて一人前の詩人面をしたいのではない。作の巧拙は知らず、とにかく、産を破り心を狂はせて迄自分が生涯それに執著した所のものを、一部なりとも後代に傳へないでは、死んでも死に切れないのだ。

41 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:16:24.89 ID:1CiX8SU2d.net

 一行が丘の上についた時、彼等は、言はれた通りに振返つて、先程の林間の草地を眺めた。忽ち、一匹の虎が草の茂みから道の上に躍り出たのを彼等は見た。

虎は、既に白く光を失つた月を仰いで、二聲三聲咆哮したかと思ふと、又、元の叢に躍り入つて、再び其の姿を見なかつた。

89 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:46:41.65 ID:1CiX8SU2d.net

それとも虎になったことも含めて精神病なんやろか

21 :風吹けば名無し:2021/07/23(金) 05:10:02.59 ID:1CiX8SU2d.net

 舊詩を吐き終つた李徴の聲は、突然調子を變へ、自らを嘲るが如くに言つた。

 羞しいことだが、今でも、こんなあさましい身と成り果てた今でも、己れは、己れの詩集が長安風流人士の机の上に置かれてゐる樣を、夢に見ることがあるのだ。

岩窟の中に横たはつて見る夢にだよ。嗤つて呉れ。詩人に成りそこなつて虎になつた哀れな男を。(袁傪は昔の青年李徴の自嘲癖を思出しながら、哀しく聞いてゐた。)

さうだ。お笑ひ草ついでに、今の懷を即席の詩に述べて見ようか。この虎の中に、まだ、曾ての李徴が生きてゐるしるしに。