夜明け前に山月記を読み返す🌓⛰🐅

1 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:08:31.50 ID:dfZHbL9a0.net
🐯・・・

55 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:35:36 ID:7OQxECm70.net

>>47
倍率100万分の1ってことになるけど受験者何人で合格者何人やねん

10 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:12:50.33 ID:z/bXVq/O0.net

なんJ民にささる話

20 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:18:40 ID:FZdToskB0.net

これを10年前にやってくれてたらテストでいい点取れたかもしれない

21 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:18:42 ID:dfZHbL9a0.net

 舊詩を吐き終つた李徴の聲は、突然調子を變へ、自らを嘲るが如くに言つた。

 羞しいことだが、今でも、こんなあさましい身と成り果てた今でも、己れは、己れの詩集が長安風流人士の机の上に置かれてゐる樣を、夢に見ることがあるのだ。
岩窟の中に横たはつて見る夢にだよ。嗤つて呉れ。詩人に成りそこなつて虎になつた哀れな男を。

(袁傪は昔の青年李徴の自嘲癖を思出しながら、哀しく聞いてゐた。)

さうだ。お笑ひ草ついでに、今の懷を即席の詩に述べて見ようか。この虎の中に、まだ、曾ての李徴が生きてゐるしるしに。

32 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:24:35.12 ID:dfZHbL9a0.net

 漸く四邊の暗さが薄らいで來た。木の間を傳つて、何處からか、曉角が哀しげに響き始めた。

 最早、別れを告げねばならぬ。醉はねばならぬ時が、(虎に還らねばならぬ時が)近づいたから、と、李徴の聲が言つた。だが、お別れする前にもう一つ頼みがある。それは我が妻子のことだ。

彼等は未だ虢略にゐる。固より、己れの運命に就いては知る筈がない。君が南から歸つたら、己れは既に死んだと彼等に告げて貰へないだらうか。決して今日のことだけは明かさないで欲しい。
厚かましいお願だが、彼等の孤弱を憐れんで、今後とも道塗に飢凍することのないやうにはからつて戴けるならば、自分にとつて、恩倖、之に過ぎたるは莫い。

44 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:30:14.70 ID:nOv6ym8Oa.net

夜明け前を読め

37 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:26:15.97 ID:7OQxECm70.net

スーパーエリートの李徴と自分を重ね合わせてしまう凡人を大量に生み出してしまった罪深い作品

28 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:21:51.48 ID:dfZHbL9a0.net

人間は誰でも猛獸使であり、その猛獸に當るのが、各人の性情だといふ。己れの場合、この尊大な羞恥心が猛獸だつた。虎だつたのだ。
之が己を損ひ、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形を斯くの如く、内心にふさはしいものに變へて了つたのだ。

今思へば、全く、己れは、己れの有つてゐた僅かばかりの才能を空費して了つた譯だ。
人生は何事をも爲さぬには餘りに長いが、何事かを爲すには餘りに短いなどと口先ばかりの警句を弄しながら、事實は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭ふ怠惰とが己れの凡てだつたのだ。
己れよりも遙かに乏しい才能でありながら、それを專一に磨いたがために、堂々たる詩家となつた者が幾らでもゐるのだ。

虎と成り果てた今、己れは漸くそれに氣が付いた。それを思ふと、己れは今も胸を灼かれるやうな悔を感じる。

4 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:09:29.89 ID:dfZHbL9a0.net

 隴西の李徴は博學才穎、天寶の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃む所頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかつた。
いくばくもなく官を退いた後は、故山、虢略に歸臥し、人と交を絶つて、ひたすら詩作に耽つた。下吏となつて長く膝を俗惡な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺さうとしたのである。

しかし、文名は容易に揚らず、生活は日を逐うて苦しくなる。李徴は漸く焦躁に驅られて來た。この頃から其の容貌も峭刻となり、肉落ち骨秀で、眼光のみ徒らに烱々として、曾て進士に登第した頃の豐頬の美少年の俤は、何處に求めやうもない。

47 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:31:20.49 ID:dfZHbL9a0.net

>>40
100倍の試験合格した後に100倍の試験合格したやつだけが受けられる倍率100倍の試験受けて合格した後合格者の席次決める試験で上位

56 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:35:55.71 ID:dfZHbL9a0.net

或日ふと氣が付くと、窓の虱が馬の樣な大きさに見えてゐた。占めたと、紀昌は膝を打ち、表へ出る。彼は我が目を疑つた。人は高塔であつた。馬は山であつた。豚は丘の如く、鷄は城樓と見える。

雀躍して家にとつて返した紀昌は、再び窓際の虱に立向ひ、燕角の弧に朔蓬の簳をつがへて之を射れば、矢は見事に虱の心の臟を貫いて、しかも虱を繋いだ毛さへ斷れぬ。

 紀昌は早速師の許に赴いて之を報ずる。飛衞は高蹈して胸を打ち、初めて「出かしたぞ」と褒めた。さうして、直ちに射術の奧儀秘傳を剩す所なく紀昌に授け始めた。

24 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:20:05 ID:r0UK2Lj00.net

中島敦は名人伝がすこ

51 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:33:37.72 ID:dfZHbL9a0.net

 それを聞いて飛衞がいふ。瞬かざるのみでは未だ射を授けるに足りぬ。次には、視ることを學べ。視ることに熟して、さて、小を視ること大の如く、微を見ること著の如くなつたならば、來つて我に告げるがよいと。

13 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:14:30.65 ID:dfZHbL9a0.net

しかし、何故こんな事になつたのだらう。分らぬ。全く何事も我々には判らぬ。理由も分らずに押付けられたものを大人しく受取つて、理由も分らずに生きて行くのが、我々生きもののさだめだ。

自分は直ぐに死を想うた。しかし、其の時、眼の前を一匹の兎が駈け過ぎるのを見た途端に、自分の中の人間は忽ち姿を消した。

再び自分の中の人間が目を覺ました時、自分の口は兎の血に塗れ、あたりには兎の毛が散らばつてゐた。之が虎としての最初の經驗であつた。

17 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:17:15 ID:dfZHbL9a0.net

 袁傪はじめ一行は、息をのんで、叢中の聲の語る不思議に聞入つてゐた。聲は續けて言ふ。

 他でもない。自分は元來詩人として名を成す積りでゐた。しかも、業未だ成らざるに、この運命に立至つた。曾て作る所の詩數百篇、固より、まだ世に行はれてをらぬ。遺稿の所在も最早判らなくなつてゐよう。

所で、その中、今も尚記誦せるものが數十ある。之を我が爲に傳録して戴き度いのだ。
何も、之に仍つて一人前の詩人面をしたいのではない。作の巧拙は知らず、とにかく、産を破り心を狂はせて迄自分が生涯それに執著した所のものを、一部なりとも後代に傳へないでは、死んでも死に切れないのだ。

49 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:32:18.07 ID:dfZHbL9a0.net

 趙の邯鄲の都に住む紀昌といふ男が、天下第一の弓の名人にならうと志を立てた。

己の師と頼むべき人物を物色するに、當今弓矢をとつては、名手・飛衞に及ぶ者があらうとは思はれぬ。百歩を隔てて柳葉を射るに百發百中するといふ達人ださうである。紀昌は遙々飛衞をたづねて其の門に入つた。

25 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:20:12 ID:dfZHbL9a0.net

>>10
言うほど刺さるか?

>>14
酔ったら酷そう

69 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:43:17 ID:dfZHbL9a0.net

 涙にくれて相擁しながらも、再び弟子が斯かる企みを抱くやうなことがあつては甚だ危いと思つた飛衞は、紀昌に新たな目標を與へて其の氣を轉ずるに如くはないと考へた。

彼は此の危險な弟子に向つて言つた。
最早、傳ふべき程のことは悉く傳へた。儞がもし之以上斯の道の蘊奧を極めたいと望むならば、ゆいて西の方大行の嶮に攀ぢ、霍山の頂を極めよ。
そこには甘蠅老師とて古今を曠しうする斯道の大家がをられる筈。老師の技に比べれば、我々の射の如きは殆ど兒戲に類する。儞の師と頼むべきは、今は甘蠅師の外にあるまいと。

16 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:16:09.25 ID:dfZHbL9a0.net

今少し經てば、己れの中の人間の心は、獸としての習慣の中にすつかり埋れて消えて了ふだらう。恰度、古い宮殿の礎が次第に土砂に埋沒するやうに。
さうすれば、しまひに己れは自分の過去を忘れ果て、一匹の虎として狂ひ廻り、今日の樣に途で君と出會つても故人と認めることなく、君を裂き喰うて何の悔も感じないだらう。
一體、獸でも人間でも、もとは何か他のものだつたんだらう。初めはそれを憶えてゐたが、次第に忘れて了ひ、初めから今の形のものだつたと思ひ込んでゐるのではないか? いや、そんな事はどうでもいい。

己れの中の人間の心がすつかり消えて了へば、恐らく、その方が、己れはしあはせになれるだらう。だのに、己れの中の人間は、その事を、此の上なく恐しく感じてゐるのだ。
ああ、全く、どんなに、恐しく、哀しく、切なく思つてゐるだらう! 己れが人間だつた記憶のなくなることを。

この氣持は誰にも分らない。誰にも分らない。己れと同じ身の上に成つた者でなければ。所で、さうだ。己れがすつかり人間でなくなつて了ふ前に、一つ頼んで置き度いことがある。

66 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:42:03 ID:m39fX01g0.net

兵庫の虎はいつになったら芽が出るんですかね

52 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:33:41.43 ID:wePQUp2p0.net

>>48
有能 ソフトバンク 柳田

70 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:43:30 ID:TWlhYxYsd.net

神定期

54 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:35:07.58 ID:dfZHbL9a0.net

 紀昌は再び家に戻り、肌着の縫目から虱を一匹探し出して、之を己が髮の毛を以て繋いだ。さうして、それを南向きの窓に懸け、終日睨み暮らすことにした。

毎日々々彼は窓にぶら下つた虱を見詰める。
初め、勿論それは一匹の虱に過ぎない。二三日たつても、依然として虱である。所が、十日餘り過ぎると、氣のせゐか、どうやらそれがほんの少しながら大きく見えて來たやうに思はれる。三月目の終りには、明らかに蠶ほどの大きさに見えて來た。

虱を吊るした窓の外の風物は、次第に移り變る。熙々として照つてゐた春の陽は何時か烈しい夏の光に變り、澄んだ秋空を高く雁が渡つて行つたかと思ふと、はや、寒々とした灰色の空から霙が落ちかかる。
紀昌は根氣よく、毛髮の先にぶら下つた有吻類・催痒性の小節足動物を見續けた。その虱も何十匹となく取換へられて行く中に、早くも三年の月日が流れた。

8 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:11:53.39 ID:dfZHbL9a0.net

殘月の光をたよりに林中の草地を通つて行つた時、果して一匹の猛虎が叢の中から躍り出た。虎は、あはや袁傪に躍りかかるかと見えたが、忽ち身を飜して、元の叢に隱れた。

叢の中から人間の聲で「あぶない所だつた」と繰返し呟くのが聞えた。其の聲に袁傪は聞き憶えがあつた。驚懼の中にも、彼は咄嗟に思ひあたつて、叫んだ。「其の聲は、我が友、李徴子ではないか?」

袁傪は李徴と同年に進士の第に登り、友人の少かつた李徴にとつては、最も親しい友であつた。温和な袁傪の性格が、峻峭な李徴の性情と衝突しなかつたためであらう。

 叢の中からは、暫く返辭が無かつた。しのび泣きかと思はれる微かな聲が時々洩れるばかりである。ややあつて、低い聲が答へた。「如何にも自分は隴西の李徴である」と。

11 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:12:54.13 ID:dfZHbL9a0.net

 後で考へれば不思議だつたが、其の時、袁傪は、この超自然の怪異を、實に素直に受容れて、少しも怪まうとしなかつた。彼は部下に命じて行列の進行を停め、自分は叢の傍に立つて、見えざる聲と對談した。

都の噂、舊友の消息、袁傪が現在の地位、それに對する李徴の祝辭。青年時代に親しかつた者同志の、あの隔てのない語調で、それ等が語られた後、袁傪は、李徴がどうして今の身となるに至つたかを訊ねた。草中の聲は次のやうに語つた。

48 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:31:58.02 ID:dfZHbL9a0.net

名人傳  中島敦

61 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:38:58.74 ID:wePQUp2p0.net

あー弦がビュンビュンするんじゃ〜

7 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:11:05 ID:dfZHbL9a0.net

翌年、監察御史、陳郡の袁傪といふ者、勅命を奉じて嶺南に使し、途に商於の地に宿つた。
次の朝未だ暗い中に出發しようとした所、驛吏が言ふことに、これから先の道に人喰虎が出る故、旅人は白晝でなければ、通れない。今はまだ朝が早いから、今少し待たれたが宜しいでせうと。
袁傪は、しかし、供廻りの多勢なのを恃み、驛吏の言葉を斥けて、出發した。

39 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:26:49.24 ID:fd8RxfhD0.net

>>4
リズミカルで素晴らしい

65 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:41:28.11 ID:dfZHbL9a0.net

 最早師から學び取るべき何ものも無くなつた紀昌は、或日、ふと良からぬ考へを起した。

 彼が其の時獨りつくづく考へるには、今や弓を以て己に敵すべき者は、師の飛衞をおいて外に無い。天下第一の名人となるためには、どうあつても飛衞を除かねばならぬと。

祕かに其の機會を窺つてゐる中に、一日偶々郊野に於て、向ふから唯一人歩み來る飛衞に出遇つた。咄嗟に意を決した紀昌が矢を取つて狙ひをつければ、その氣配を察して飛衞も亦弓を執つて相應ずる。
二人互ひに射れば、矢は其の度に中道にして相當り、共に地に墜ちた。地に落ちた矢が輕塵をも揚げなかつたのは、兩人の技が何れも神に入つてゐたからであらう。

30 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:22:46 ID:dfZHbL9a0.net

己れは昨夕も、彼處で月に向つて咆えた。誰かに此の苦しみが分つて貰へないかと。

しかし、獸どもは己れの聲を聞いて、唯、懼れ、ひれ伏すばかり。
山も樹も月も露も、一匹の虎が怒り狂つて、哮つてゐるとしか考へない。天に躍り地に伏して嘆いても、誰一人己れの氣持を分つて呉れる者はない。

恰度、人間だつた頃、己れの傷つき易い内心を誰も理解して呉れなかつたやうに。己れの毛皮の濡れたのは、夜露のためばかりではない。

50 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:33:05.36 ID:dfZHbL9a0.net

 飛衞は新入の門人に、先づ瞬きせざることを學べと命じた。

紀昌は家に歸り、妻の機織臺の下に潛り込んで、其處に仰向けにひつくり返つた。眼とすれすれに機躡が忙しく上下往來するのをじつと瞬かずに見詰めてゐようといふ工夫である。

理由を知らない妻は大に驚いた。第一、妙な姿勢を妙な角度から良人に覗かれては困るといふ。厭がる妻を紀昌は叱りつけて、無理に機を織り續けさせた。來る日も來る日も彼はこの可笑しな恰好で、瞬きせざる修練を重ねる。

二年の後には、遽だしく往返する牽挺が睫毛を掠めても、絶えて瞬くことがなくなつた。彼は漸く機の下から匍出す。最早、鋭利な錐の先を以て瞼を突かれても、まばたきをせぬ迄になつてゐた。

不意に火の粉が目に飛入らうとも、目の前に突然灰神樂が立たうとも、彼は決して目をパチつかせない。彼の瞼は最早それを閉ぢるべき筋肉の使用法を忘れ果て、夜、熟睡してゐる時でも、紀昌の目はクワッと大きく見開かれた儘である。

竟に、彼の目の睫毛と睫毛との間に小さな一匹の蜘蛛が巣をかけるに及んで、彼は漸く自信を得て、師の飛衞に之を告げた。

36 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:25:39.16 ID:dfZHbL9a0.net

(昭和17年2月發表)

35 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:25:26.87 ID:dfZHbL9a0.net

 一行が丘の上についた時、彼等は、言はれた通りに振返つて、先程の林間の草地を眺めた。忽ち、一匹の虎が草の茂みから道の上に躍り出たのを彼等は見た。虎は、既に白く光を失つた月を仰いで、二聲三聲咆哮したかと思ふと、又、元の叢に躍り入つて、再び其の姿を見なかつた。

15 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:15:05.40 ID:dfZHbL9a0.net

 それ以來今迄にどんな所行をし續けて來たか、それは到底語るに忍びない。ただ、一日の中に必ず數時間は、人間の心が還つて來る。さういふ時には、曾ての日と同じく、人語も操れれば、複雜な思考にも堪へ得るし、經書の章句をも誦ずることも出來る。
その人間の心で、虎としての己の殘虐な行のあとを見、己の運命をふりかへる時が、最も情なく、恐しく、憤ろしい。

しかし、その、人間にかへる數時間も、日を經るに從つて次第に短くなつて行く。
今迄は、どうして虎などになつたかと怪しんでゐたのに、此の間ひよいと氣が付いて見たら、己れはどうして以前、人間だつたのかと考へてゐた。之は恐しいことだ。

19 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:17:42.73 ID:Taz0psfq0.net

すこ

59 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:38:23.48 ID:dfZHbL9a0.net

>>53
普通に枕草子ちゃうんか?

64 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:40:55.78 ID:dfZHbL9a0.net

>>55
ちょっと盛ってたわ
李徴は唐代やから郷試と会試だけやで
https://i.imgur.com/0wbJ9QL.jpg

40 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:28:54.52 ID:Frxbwlgq0.net

この人司法試験の何倍も難しい科挙受かってるんやろ

62 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:39:29.07 ID:nc1CNORD0.net

>>59
枕草子にそんなのあったっけ?

3 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:09:13.20 ID:BpZxS68p0.net

冷静に思い返すとクソつまんねえ駄文

68 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:42:37.21 ID:dfZHbL9a0.net

(斯うした事を今日の道義觀を以て見るのは當らない。美食家の齊の桓公が己の未だ味はつたことのない珍味を求めた時、厨宰の易牙は己が息子を蒸燒にして之をすすめた。十六歳の少年、秦の始皇帝は父が死んだ其の晩に、父の愛妾を三度襲うた。凡てそのやうな時代の話である。)

18 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:17:41.30 ID:dfZHbL9a0.net

 袁傪は部下に命じ、筆を執つて叢中の聲に隨つて書きとらせた。李徴の聲は叢の中から朗々と響いた。長短凡そ三十篇、格調高雅、意趣卓逸、一讀して作者の才の非凡を思はせるものばかりである。
しかし、袁傪は感嘆しながらも漠然と次の樣に感じてゐた。成程、作者の素質が第一流に屬するものであることは疑ひない。しかし、この儘では、第一流の作品となるのには、何處か(非常に微妙な點に於て)缺ける所があるのではないか、と。

26 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:20:37 ID:dfZHbL9a0.net

 時に、殘月、光冷やかに、白露は地に滋く、樹間を渡る冷風は既に曉の近きを告げてゐた。人々は最早、事の奇異を忘れ、肅然として、この詩人の薄倖を嘆じた。李徴の聲は再び續ける。

 何故こんな運命になつたか判らぬと、先刻は言つたが、しかし、考へやうに依れば、思ひ當ることが全然ないでもない。

人間であつた時、己れは努めて人との交を避けた。人々は己れを倨傲だ、尊大だといつた。實は、それが殆ど羞恥心に近いものであることを、人々は知らなかつた。
勿論、曾ての郷黨の秀才だつた自分に、自尊心が無かつたとは云はない。しかし、それは臆病な自尊心とでもいふべきものであつた。

58 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:38:05.00 ID:dfZHbL9a0.net

 二月の後、偶々家に歸つて妻といさかひをした紀昌が之を威さうとして烏號の弓に衞の矢をつがへきりりと引絞つて妻の目を射た。矢は妻の睫毛三本を射切つて彼方に飛び去つたが、射られた本人は一向に氣づかず、まばたきもしないで亭主を罵り續けた。

蓋し、彼の至藝による矢の速度と狙ひの精妙さとは、實に此の域に迄達してゐたのである。

57 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:37:21.86 ID:dfZHbL9a0.net

 目の基礎訓練に五年もかけた甲斐があつて紀昌の腕前の上達は、驚く程速い。

 奧儀傳授が始つてから十日の後、試みに紀昌が百歩を隔てて柳葉を射るに、既に百發百中である。二十日の後、一杯に水を湛へた盃を右肱の上に載せて剛弓を引くに、狙ひに狂ひの無いのは固より、杯中の水も微動だにしない。

一月の後、百本の矢を以て速射を試みた所、第一矢が的に中れば、續いて飛來つた第二の矢は誤たず第一矢の括に中つて突き刺さり、更に間髮を入れず第三矢の鏃が第二矢の括にガッシと喰ひ込む。
矢矢相屬し、發發相及んで、後矢の鏃は必ず前矢の括に喰入るが故に、絶えて地に墜ちることがない。

瞬く中に、百本の矢は一本の如くに相連り、的から一直線に續いた其の最後の括は猶弦を銜むが如くに見える。傍で見てゐた師の飛衞も思はず「善し!」と言つた。

34 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:25:13.21 ID:dfZHbL9a0.net

 袁傪は叢に向つて、懇ろに別れの言葉を述べ、馬に上つた。叢の中からは、又、堪へ得ざるが如き悲泣の聲が洩れた。袁傪も幾度か叢を振返りながら、涙の中に出發した。

53 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:35:06.91 ID:nc1CNORD0.net

古文かなんかでやった冬の窓から見る景色綺麗みたいな内容のやつ思い出せん

31 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:24:07.35 ID:dfZHbL9a0.net

>>20
高校生の頃の朝の5時は寝とるやろ
今から純粋に小説として楽しめばええやん😠

27 :風吹けば名無し:2019/11/04(月) 05:21:09.47 ID:dfZHbL9a0.net

己れは詩によつて名を成さうと思ひながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交つて切磋琢磨に努めたりすることをしなかつた。
かといつて、又、己れは俗物の間に伍することも潔しとしなかつた。共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所爲である。

己の珠に非ざることを惧れるが故に、敢て刻苦して磨かうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、碌々として瓦に伍することも出來なかつた。
己れは次第に世と離れ、人と遠ざかり、憤悶と慙恚とによつて益々己の内なる臆病な自尊心を飼ひふとらせる結果になつた。