明け方に山月記を読み返す🌒⛰🐅

1 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:06:55 ID:eFQp2/Aqd.net
🐯・・・

32 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:20:45 ID:eFQp2/Aqd.net

己れには最早人間としての生活は出來ない。たとへ、今、己れが頭の中で、どんな優れた詩を作つたにした所で、どういふ手段で發表できよう。

まして、己れの頭は日毎に虎に近づいて行く。どうすればいいのだ。
己れの空費された過去は? 己れは堪らなくなる。

さういふ時、己れは、向うの山の頂の巖に上り、空谷に向つて吼える。
この胸を灼く悲しみを誰かに訴へたいのだ。

59 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:36:30 ID:eFQp2/Aqd.net

>>56
太宰で一番オススメできるのって何や?
斜陽桜桃ヴィヨンの妻あたりは読んだけど

4 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:07:40 ID:viCc7gge0.net

🐺

43 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:25:59 ID:eFQp2/Aqd.net

 袁傪は叢に向つて、懇ろに別れの言葉を述べ、馬に上つた。叢の中からは、又、堪へ得ざるが如き悲泣の聲が洩れた。袁傪も幾度か叢を振返りながら、涙の中に出發した。

42 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:25:43 ID:eFQp2/Aqd.net

>>35
作中に出てくる即興の詩は韻を踏み切れとらんし同じ字を違う句で使ったらアカンとか平仄とかもなっとらんらしいでワイにはわからんけど

でもこの詩は中島敦が作った詩やなくて下敷きになった作品からある詩やからな
漢学の素養のある中島敦にとってこの詩を褒めるのが許せなかったから「足りないものがある」とした説は根強くあるで

70 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:44:45 ID:tXezI2mS0.net

中島敦やったかな
島の最後の子供見に行くやつすこ

79 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:53:04 ID:eFQp2/Aqd.net

>>78
中島敦で一番おもろいのは『李陵』と『弟子』や
長くて貼ることはできんが

68 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:44:19 ID:dyxtcfFda.net

>>62忘れるなよ編集😠 こんなとんでもない名作普通忘れるかね😅

17 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:12:32 ID:eFQp2/Aqd.net

少し明るくなつてから、谷川に臨んで姿を映して見ると、既に虎となつてゐた。

自分は初め眼を信じなかつた。次に、之は夢に違ひないと考へた。夢の中で、之は夢だぞと知つてゐるやうな夢を、自分はそれ迄に見たことがあつたから。

どうしても夢でないと悟らねばならなかつた時、自分は茫然とした。さうして、懼れた。全く、どんな事でも起り得るのだと思うて、深く懼れた。

しかし、何故こんな事になつたのだらう。分らぬ。全く何事も我々には判らぬ。理由も分らずに押付けられたものを大人しく受取つて、理由も分らずに生きて行くのが、我々生きもののさだめだ。

自分は直ぐに死を想うた。しかし、其の時、眼の前を一匹の兎が駈け過ぎるのを見た途端に、自分の中の人間は忽ち姿を消した。

再び自分の中の人間が目を覺ました時、自分の口は兎の血に塗れ、あたりには兎の毛が散らばつてゐた。之が虎としての最初の經驗であつた。

37 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:22:29 ID:FUrYEMj60.net

サンガツ記は?

50 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:29:36 ID:eFQp2/Aqd.net

>>48
初めから巨人に連ねとったらおかしいやろ
ドラフトに名を連ねにしろ

16 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:11:53 ID:eFQp2/Aqd.net

 今から一年程前、自分が旅に出て汝水のほとりに泊つた夜のこと、一睡してから、ふと眼を覺ますと、戸外で誰かが我が名を呼んでゐる。聲に應じて外へ出て見ると、聲は闇の中から頻りに自分を招く。

覺えず、自分は聲を追うて走り出した。

無我夢中で駈けて行く中に、何時しか途は山林に入り、しかも、知らぬ間に自分は左右の手で地を攫んで走つてゐた。何か身體中に力が充ち滿ちたやうな感じで、輕々と岩石を跳び越えて行つた。

氣が付くと、手先や肱のあたりに毛を生じてゐるらしい。

44 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:26:13 ID:eFQp2/Aqd.net

 一行が丘の上についた時、彼等は、言はれた通りに振返つて、先程の林間の草地を眺めた。忽ち、一匹の虎が草の茂みから道の上に躍り出たのを彼等は見た。

虎は、既に白く光を失つた月を仰いで、二聲三聲咆哮したかと思ふと、又、元の叢に躍り入つて、再び其の姿を見なかつた。

58 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:36:14 ID:AbJ2a+Lx0.net

学生の時は読めた漢字が読めん

77 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:50:51 ID:eFQp2/Aqd.net

>>74
それでもホンマに虎にならんだけマシやろ
君もワイも李徴とは違うんやで

6 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:08:03 ID:eFQp2/Aqd.net

 隴西の李徴は博學才穎[えい]、天寶の末年、若くして名を虎榜[こぼう]に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃む所頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかつた。

いくばくもなく官を退いた後は、故山、虢略に歸臥し、人と交を絶つて、ひたすら詩作に耽つた。下吏となつて長く膝を俗惡な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺さうとしたのである。

しかし、文名は容易に揚らず、生活は日を逐うて苦しくなる。李徴は漸く焦躁に驅られて來た。

この頃から其の容貌も峭刻となり、肉落ち骨秀で、眼光のみ徒らに烱々として、曾て進士に登第した頃の豐頬の美少年の俤は、何處に求めやうもない。

30 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:19:23 ID:eFQp2/Aqd.net

己れは詩によつて名を成さうと思ひながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交つて切磋琢磨に努めたりすることをしなかつた。

かといつて、又、己れは俗物の間に伍することも潔しとしなかつた。共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所爲である。

己の珠に非ざることを惧れるが故に、敢て刻苦して磨かうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、碌々として瓦に伍することも出來なかつた。

己れは次第に世と離れ、人と遠ざかり、憤悶と慙恚とによつて益々己の内なる臆病な自尊心を飼ひふとらせる結果になつた。

47 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:27:31 ID:eFQp2/Aqd.net

>>40
前にもおったなワイは太宰も好きやけどそれ読み返したかったら昼に自分でやってくれや

66 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:43:37 ID:19AbagOL0.net

空に向かって吠えた声が消えていくように、姿も消えて歴史からも消えたわけか

5 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:07:58 ID:84adv/1O0.net

虎になるなら別にいいよな
驕りで変身するならミミズぐらいなれよな

63 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:40:26 ID:dyxtcfFda.net

>>59すまん😣 他人におすすめ出来るほどまだ太宰読んでないねん😅 古本あさってみるわ☺

34 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:21:40 ID:eFQp2/Aqd.net

>>24
過去文献漁るのも論文読むのもどうしてたんやろな昔はほんますごいわ

38 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:22:35 ID:eFQp2/Aqd.net

 言終つて、叢中から慟哭の聲が聞えた。袁傪も亦涙を泛べ、欣んで李徴の意に副ひ度い旨を答へた。李徴の聲は併し忽ち又先刻の自嘲的な調子に戻つて、言つた。

 本當は、先づ、この事の方を先にお願ひすべきだつたのだ、己れが人間だつたなら。飢ゑ凍えようとする妻子のことよりも、己の乏しい詩業の方を氣にかけてゐる樣な男だから、こんな獸に身を墮すのだ。

 さうして、附加へて言ふことに、袁傪が嶺南からの歸途には決して此の途を通らないで欲しい、其の時には自分が醉つてゐて故人を認めずに襲ひかかるかも知れないから。

又、今別れてから、前方百歩の所にある、あの丘に上つたら、此方を振りかへつて見て貰ひ度い。自分は今の姿をもう一度お目に掛けよう。勇に誇らうとしてではない。我が醜惡な姿を示して、以て、再び此處を過ぎて自分に會はうとの氣持を君に起させない爲であると。

18 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:13:05 ID:viCc7gge0.net

>>15
原作や

81 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:55:50.13 ID:eFQp2/Aqd.net

>>80
それでも人間は誰でも猛獣使いなんや李徴の場合は虎だったってだけや
その猛獣を飼い太らせたらあかんねんな

36 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:21:59 ID:eFQp2/Aqd.net

 漸く四邊[あたり]の暗さが薄らいで來た。木の間を傳つて、何處からか、曉角が哀しげに響き始めた。

 最早、別れを告げねばならぬ。醉はねばならぬ時が、(虎に還らねばならぬ時が)近づいたから、と、李徴の聲が言つた。だが、お別れする前にもう一つ頼みがある。それは我が妻子のことだ。

彼等は未だ虢略にゐる。固より、己れの運命に就いては知る筈がない。君が南から歸つたら、己れは既に死んだと彼等に告げて貰へないだらうか。決して今日のことだけは明かさないで欲しい。

厚かましいお願だが、彼等の孤弱を憐れんで、今後とも道塗に飢凍することのないやうにはからつて戴けるならば、自分にとつて、恩倖、之に過ぎたるは莫い。

67 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:44:16 ID:eFQp2/Aqd.net

>>64
クレスケンスニキが起きとる時にワイが起きててワイの気が向いて山月記のスレ立てたのをクレスケンスニキが目にしないと立たんらしいから条件相当厳しいわ

24 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:16:00 ID:AbJ2a+Lx0.net

これネットもないのによく書けたと思うわ

15 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:11:13.92 ID:eFQp2/Aqd.net

>>9
漢文の山月記ってなんやねん😡

51 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:30:54 ID:61wfDPqY0.net

詩のセンスが足りないってdisられるところ本当に悲しい

76 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:49:08 ID:JHCT5b2jd.net

この期に及んで詩のできを家族より優先する、その心根がいかんのだ

14 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:10:59.52 ID:eFQp2/Aqd.net

 後で考へれば不思議だつたが、其の時、袁傪は、この超自然の怪異を、實に素直に受容れて、少しも怪まうとしなかつた。彼は部下に命じて行列の進行を停め、自分は叢の傍に立つて、見えざる聲と對談した。

都の噂、舊友の消息、袁傪が現在の地位、それに對する李徴の祝辭。青年時代に親しかつた者同志の、あの隔てのない語調で、それ等が語られた後、袁傪は、李徴がどうして今の身となるに至つたかを訊ねた。草中の聲は次のやうに語つた。

65 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:42:49 ID:eFQp2/Aqd.net

中島敦が戦争と作家について書いたのが『章魚の木の下で』やから戦争と中島敦の参考にはなるで
あとは『斗南先生』でも少し言及がある

60 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:36:31 ID:fLGZsMGv0.net

偶因狂疾成殊类  灾患相仍不可逃
今日爪牙谁敢敌  当时声迹共相高
我为异物蓬茅下  君已乘轺气势豪
此夕溪山对明月  不成长啸但成嘷

45 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:26:31 ID:8p5a4++N0.net

>>30
ここよめたからかえるのら🥺
            🦵🦵

45 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:26:31 ID:8p5a4++N0.net

>>30
ここよめたからかえるのら🥺
            🦵🦵

7 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:08:31 ID:8p5a4++N0.net

おっはー🤟🥺🤟

23 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:15:44 ID:eFQp2/Aqd.net

 袁傪はじめ一行は、息をのんで、叢中の聲の語る不思議に聞入つてゐた。聲は續けて言ふ。

 他でもない。自分は元來詩人として名を成す積りでゐた。しかも、業未だ成らざるに、この運命に立至つた。曾て作る所の詩數百篇、固より、まだ世に行はれてをらぬ。遺稿の所在も最早判らなくなつてゐよう。

所で、その中、今も尚記誦せるものが數十ある。之を我が爲に傳録して戴き度いのだ。
何も、之に仍つて一人前の詩人面をしたいのではない。作の巧拙は知らず、とにかく、産を破り心を狂はせて迄自分が生涯それに執著した所のものを、一部なりとも後代に傳へないでは、死んでも死に切れないのだ。

57 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:35:17 ID:eFQp2/Aqd.net

>>51

ちゃんと読むんやで
語り手は「李徴の詩のセンス」を絶賛しとるし袁傪も「作者の素質が第一流に属することは疑いない」って感じとるんやで

 袁傪は部下に命じ、筆を執つて叢中の聲に隨つて書きとらせた。李徴の聲は叢の中から朗々と響いた。長短凡そ三十篇、格調高雅、意趣卓逸、一讀して作者の才の非凡を思はせるものばかりである。

しかし、袁傪は感嘆しながらも漠然と次の樣に感じてゐた。成程、作者の素質が第一流に屬するものであることは疑ひない。しかし、この儘では、第一流の作品となるのには、何處か(非常に微妙な點に於て)缺ける所があるのではないか、と。

29 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:18:51 ID:eFQp2/Aqd.net

 時に、殘月、光冷やかに、白露は地に滋く、樹間を渡る冷風は既に曉の近きを告げてゐた。人々は最早、事の奇異を忘れ、肅然として、この詩人の薄倖を嘆じた。李徴の聲は再び續ける。

 何故こんな運命になつたか判らぬと、先刻は言つたが、しかし、考へやうに依れば、思ひ當ることが全然ないでもない。

人間であつた時、己れは努めて人との交を避けた。人々は己れを倨傲だ、尊大だといつた。實は、それが殆ど羞恥心に近いものであることを、人々は知らなかつた。

勿論、曾ての郷黨の秀才だつた自分に、自尊心が無かつたとは云はない。しかし、それは臆病な自尊心とでもいふべきものであつた。

80 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:54:17.15 ID:dyxtcfFda.net

>>77李徴ほど才気煥発でもないし葛藤もないからね😅 だらだら生きてるわ☺

33 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:21:08 ID:eFQp2/Aqd.net

己れは昨夕も、彼處で月に向つて咆えた。誰かに此の苦しみが分つて貰へないかと。

しかし、獸どもは己れの聲を聞いて、唯、懼れ、ひれ伏すばかり。山も樹も月も露も、一匹の虎が怒り狂つて、哮つてゐるとしか考へない。
天に躍り地に伏して嘆いても、誰一人己れの氣持を分つて呉れる者はない。

恰度、人間だつた頃、己れの傷つき易い内心を誰も理解して呉れなかつたやうに。己れの毛皮の濡れたのは、夜露のためばかりではない。

72 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:46:12.93 ID:eFQp2/Aqd.net

>>66
歴史にはならんまでも後世に詩と名前は一篇だけ伝わっとる
それが李徴の意志に沿うのかどうか考える余地あるで

3 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:07:34 ID:73bYAlSHa.net

定期

27 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:17:05 ID:eFQp2/Aqd.net

さうだ。お笑ひ草ついでに、今の懷を即席の詩に述べて見ようか。この虎の中に、まだ、曾ての李徴が生きてゐるしるしに。

 袁傪は又下吏に命じて之を書きとらせた。その詩に言ふ。

偶因狂疾成殊類  災患相仍不可逃
今日爪牙誰敢敵  當時聲跡共相高
我爲異物蓬茅下  君已乘軺氣勢豪
此夕溪山對明月  不成長嘯但成嘷

71 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:46:10.89 ID:8p5a4++N0.net

>>67
なるほど😮
優情はさっきみた🥺

56 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:33:58 ID:dyxtcfFda.net

覚えていたんだ😃 光栄やで😃 まだまだワイは未熟やから太宰の何たるかをもう少し勉強してからにするわ😅🐟

22 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:15:26 ID:eFQp2/Aqd.net

いや、そんな事はどうでもいい。己れの中の人間の心がすつかり消えて了へば、恐らく、その方が、己れはしあはせになれるだらう。だのに、己れの中の人間は、その事を、此の上なく恐しく感じてゐるのだ。

ああ、全く、どんなに、恐しく、哀しく、切なく思つてゐるだらう! 己れが人間だつた記憶のなくなることを。

この氣持は誰にも分らない。誰にも分らない。己れと同じ身の上に成つた者でなければ。所で、さうだ。己れがすつかり人間でなくなつて了ふ前に、一つ頼んで置き度いことがある。

11 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:09:42.60 ID:eFQp2/Aqd.net

 翌年、監察御史、陳郡の袁傪といふ者、勅命を奉じて嶺南に使し、途に商於の地に宿つた。

次の朝未だ暗い中に出發しようとした所、驛吏が言ふことに、これから先の道に人喰虎が出る故、旅人は白晝でなければ、通れない。今はまだ朝が早いから、今少し待たれたが宜しいでせうと。

袁傪は、しかし、供廻りの多勢なのを恃み、驛吏の言葉を斥けて、出發した。

2 :風吹けば名無し:2020/03/28(土) 05:07:04 ID:eFQp2/Aqd.net

山月記 中島敦